中学2年生の時に、両親や大勢の人に心配をかけたことがありました。それは日曜日、植物採集に須ノ川へ山本トミエさんと二人で行くことにしていました。ところが樫元の洋ちゃんから「観音岳に植物採集に行くけど…一諸に行こうや!」と誘われて、行き先を変更して男の子たちと一諸に山登りをすることにしました。メンバーは今では正確には忘れてしまいましたが、5人か6人だったと思います。元気に山頂に登り…眺めも良く、下のほうには一面に黄色い菜の花の畑も見え、とてもうれしい気分でした。

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峠の木陰で昼休みをしたあと、上槇(カンマキ)という山の集落に通ずると思われる山道をしばらく歩いて行ってみることになりました。冒険心旺盛な頃です。しかし昼のお弁当を持って来なかった二人ぼどは、ふもとへ引き返すことになりました。木陰の枯葉道だったので軽く歩いて行きました。人数も多かったので、おしゃべりしながら楽しく歩きました。いつしか道は下り道になっていて足もはずみました。…しかし、いくら歩いても人家にたどりつきません。どこかの岐れ道で方向を誤ったのかもしれません。引き返そうか…と後を見ましたが、森の中の道は方角もはっきりせず、それに疲れてきたので…このまま道を下りることにしました。

それからまたずいぶんと歩きつづけました。やっと畑のある所まで下りるとホッとしました。しばらく歩くと農家があったので場所をきくと「僧都」と言われました。知らない所です。いつの間にかあたりは夕方になっていました。疲れた足を引きずりながらまた歩き続けました。夕暮れの中にやっと町が見えてきました。城辺です。バス停に行くと、柏方面へのパスの最終便が出た後でした。そこの公衆電話で、洋ちゃんがトッ子さんからお金をかりて柏の高橋商店に電話をかけました。

それから私達は柏への道を歩きました。商店街の明るさとは反対にフラフラしながら歩いていました。長崎の近くで小松くんが「柏の映画館にフイルムを運ぶ小型トラックが御荘から出るぞ、それに乗せてもらおう!」といい出し、運よくその車の前に飛びだし停めて帰る途中、菊川で柏からの迎えの農協のオート三輪が門屋先生と一諸に来てくれました。途中で採った貴重なギンリョウソウを指さして「これがあれば怒られないかもしれん」と言いました。翌日の学校の朝礼で、私達のことが報告され、どこかに行く時はかならずお金を持って行くように、という注意がありました。私達はきまりが悪く…その後はこの話にはなるべく避けるようにしてきました。今でも柏に帰るとこの話が出ます。

兄が「おまえが帰ってこんので心配しよったら、奥の畑で仕事をした人が「男の子5~6人と女の子2人が観音岳へ登って行くのを見たぜ!」と言うので、大騒動になったんぞ!消防団にも出てもらい親父ら皆が必至で観音岳へ捜しに登ったんぞ!おまえはどこえ行くやらわからん子やった…」
それにしても、山を越えてどれだけ歩いたのか…、遅れると、先に歩く人が立ち止まって待ってくれて、疲れ具合のちがう同級生が気づかい合って歩いたことは忘れられません。失敗だった植物採集…トッ子さんには少しごめんと思っています。中学時代の観音岳登山はさまざまな思いが含まれている懐かしい事件です。

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観音岳782メートル