今回は野外撮影の実習。「ゆりかもめ」で船の科学館前駅に11時半に集合した。お台場のフジテレビの隣の駅である。高架モノレールみたいな電車なので眺望が良い。偶然Yokoさんと隣席になり会話しているうちに駅に着いた。出口で先生など数人が待っていた。いつもは青山のスタジオでの勉強と実習だが今回は本格的に野外撮影で、望遠や魚眼レンズの特性を活かした撮影が実習できるので楽しみだ。

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先生はオレンジ色のフォルクスワーゲンを近くの駐車場に停め、カメラ、レフ板などを載せていた。快晴無風。絶好の撮影日和だ。 なんか宮崎の風景を思わせる。この船の科学館「しおかぜ公園は隣のフジテレビの若者スポットの喧騒だ。それが信じられないほど静かな緑の広場である。東京湾ぞいなので大型船の航行もすぐ近くで見ることができる。木造の吊り橋もあり背景にはもってこいの場所だ。

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先生はマスコミにも著名な人なのでスクールは人気で受講生は女性が多い。そのことは撮影実習でモデルに困らないことを意味する。なぜか写真モデルは女性が適する。ことに美人の顔ははあまり自己主張がないので「写真的」に使いやすい。 カメラマンにとっては美人の顔は表現の材料にすぎない。自己主張の強い顔は使いにくい。演劇と逆だ。このカメラスクールは人物撮影がメインなので、お互いにモデルになって撮影実習する。ちなみにカメラマンという名称は男性をさす。女性の場合は「フォトグラファー」と言う。最近はカメラマンを総称してフォトグラファーということが多くなった。

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一眼レフの場合はレンズ交換ができる。風景撮影の場合は標準レンズや広角レンズを使う場合が多い。野外で人物撮影の場合は130㎜程度の望遠レンズを使うことが多い。これは人物の表情を活かし背景をボカす効果がある。上左の木造橋は50㎜程度の標準ズーム。実際に撮った数字は憶えていないがかなり広角で撮った。被写界深度が広いため遠くのビル群まで写っている。 上右の人物は望遠レンズで撮ったもの。背景が消えてカメラを構える女性の表情が読みとれる。表現したいものはレンズの交換によって実現する。最近は広角から望遠まで大ズームレンズもある。便利だがやや大きくて重たい。「人物撮影」は望遠レンズ。 これは受講生のA子さん。人物撮影に最適といわれる半逆光で撮ったので、髪がつややかに光り女性らしさを演出している。顔だけでなく指のしぐさを添えたので女の子らしい画面になった。モデルとカメラマンの距離は約7㍍で、モデルと背景の樹葉の距離は約20㍍である。その程度のほうがきれいにボケる。

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フォトグラファー志望の女性なのでカメラマンの気持がわかりいろいろなポーズを辛抱強くとってくれた。それを連写した中の一枚である。 なにげない写真だが、この構図がプロにより近い撮りかた。モデルを半逆光の位置に置き、目線は斜め上。背景の白い噴水が雰囲気つくりに生きている。簡単なようでなかなか撮れるものではない。写真の構図や感覚のことを「カメラ・アイ」というが、まさに優れたカメラ・アイによる1枚だ。

「じゃあ、みんな、そこに立って自由にポーズしなさいよ」と言って先生が低い位置からしゃがむようにして撮ってくれた。魚眼レンズらしい画面の歪みやシルエットの妙を活かしたインパクトのある画面である。階段の光のはね具合や背景の陽の鈍い輝きもよい。計算された画面である。プロの作品だ。私も魚眼レンズがほしいと思ったが、かなり高価なものだった。

 写真はカメラのシャッターを押せば誰でもちゃんと写るが、「優れた写真」というものは構図や光のかげん、モデルとのコミニュケーションなど多くの条件を瞬時にこなして撮る必要がある。もちろんその前にカメラの光源設定や感度設定もある。その写真に《カメラマンの意思》というものが込められていなければならない。ただ「きれいに撮った」写真は絵葉書と同じである。写真道はむずかしい。